第18章 閑話休題
「更紗!本当に君は強くなったな!木刀が持っていかれるかと思ったぞ!」
「ありがとうございます。ですが余裕の笑みでそう言われても……説得力がありません!」
力勝負となると更紗がいくら特異体質で筋力を高めようと、素の力で遥かに上回る杏寿郎には勝てない。
その証拠に更紗の体は後ろへ押され眉間にシワがよっているのに、杏寿郎はまだ本気を出していないような笑顔で満たされている。
「それは君が炎の呼吸を使用しているからだろう!言ったはずだ、全力で向かって来なさいと!柱として師範として……負けてやるつもりはないぞ!」
杏寿郎は木刀を振り切って華奢な体を弾き飛ばすが、すぐにそれに反応した更紗は体勢を整えすかさず独自の構えを取った。
「わざと負けたりしたら一刻ほど泣き続けますから!紫炎の呼吸 弍ノ型 星炎燎原」
「それは困るな!なら全力で迎え撃ってやる!」
更紗の広範囲攻撃を盛炎のうねりで事も無げに受け流し、双方様々な技を使い、跳躍し詰め寄り体術まで駆使してしばらくの間激しい攻防を続けていた。
恐らく今の2人の脳内に更紗の未来が掛かっていることは完全に抜け落ちており、相手をどう打ち負かすかだけで満たされているだろう。