第18章 閑話休題
こうして全員の許可がおりたことで、更紗と杏寿郎は新たに支給された隊服に身を包み、羽織まできちんと袖を通し木刀を腰へ差して、普段鍛錬を重ねている場所へと全員を引き連れてやって来た。
隊服を着たのは意外にも紗那からの要望で、普段鬼と闘う姿を忠実に再現してほしいと言われたからだ。
その紗那も今や涼平と共に更紗の実力を見極めようと厳しい表情をしている。
その表情に緊張を高めて体を強ばらせる更紗の頭を、杏寿郎は優しく撫でてやった。
「いつも通りで大丈夫だ。だが全力で向かって来なさい!言っている意味は分かるな?」
つまり持てる力全てをさらけ出して来いという事だ。
それは痣も含まれており、発現させたうえでの技の使用も含まれるのだろう。
「かしこまりました。師範、2度目の試合よろしくお願いいたします!」
ふわりと笑った更紗に緊張は一切なくなり、杏寿郎がホッと息を着くと同時に両親は目を丸くした。
「今から試合なのに……どうして笑顔になれるのかしら?自分の未来がかかってるのに」
笑顔のまま全員へ背を向けて楽しそうに話しながら、試合のために離れていくなんだか逞しくなった娘の姿を見送る2人の疑問を解くかのように、天元から試合の合図が下された。