第1章 月夜
煉獄は更紗を庇うように後ろを歩かせ、常に前後左右、上下にまで神経を張り巡らし屋敷へ踏み込む。
1歩踏み込むと、そこはこの世とは思えないほどの惨状であった。
彼自身、特殊な組織に組みしてる故このような悲惨な現場は悲しい事だが多く見ており、免疫がある。
だが普通に生活を営んでいるものにとっては、限りなく非日常で恐怖する光景だ。
後ろを歩く少女の様子を伺うべく意識を向かわせてみると、やはり呼吸が浅くなっている。
(やはり怯えているか。だがあの鬼の言う通り本当にこの少女が稀血の人間ならば、外に待機させることも出来ない……聞かなくてはならない事もある、そばにいさせる他ない)
「少女よ!怖ければ目を瞑って俺の服をつかんでおけ!あまり広くないので、少女の探し人はすぐに見つかるはずだ!」
少しでも更紗の恐怖を取り除ければと声をかけるが
……沈黙。
だが先程まで辺りに視線をさ迷わせていたのが煉獄の姿だけを見つめ、どうしようか迷っている様子である。
「いえ、このままで大丈夫です。早く見つけてさしあげたいですし、私が煉獄様の手を煩わせてしまえば、鬼……が出てきた時に今よりも足手まといになってしまうので」