第1章 月夜
「中に入るが、傷は大丈夫か??辛くなったらすぐに……む!?」
煉獄は背中を支えていた右腕に違和感を感じ、左腕だけに更紗を抱え直してそれを確認した。
(あれだけ流れていたのに、俺の腕には血が着いていない。いくら羽織で傷を圧迫してるとは言え、おかしくないか?)
左腕に抱えている更紗の背中を右手で羽織越しに触れてみるもやはり手に血は着かず、また羽織も血に濡れていなかった。
「本当に、君は何をしたんだ?」
ゆらゆらと困惑気味に炎のような瞳を揺らして煉獄は呟き更紗を見つめるが、何を思っているのか分からない表情でただ静かに煉獄を見つめ返している。
「いや、いい。差し支えなければ後で教えて欲しい。それともし君の傷が何かしらの現象で治っているならば、歩けるだろうか?」
問いかけに先程の表情から一変し、強い意志を抱いた瞳をして大きく頷いた。
更紗も煉獄の武器である刀を見ていたので、自分が抱えられたままだと戦いになった時に妨げになる事を理解している。
「はい、もちろんです」
「うむ!いい返事だ!!辛いかもしれんが、屋敷内の確認が終わるまで踏ん張ってもらえると助かる!」