第18章 閑話休題
(悲しい顔しないで)
そう続けようとすると、ふわりと心地よい重みが肩にかけられた。
右側に涼平、左側に紗那が寄り添ってきたのだ。
「それは更紗ちゃんが一生懸命生きた証だから嫌だなんて思わないよ。ただ少し気になっただけなの」
「直す必要はないんだ。不安にさせてしまって悪かったね……どんな言葉遣いでも更紗の事が大好きで宝物なのは変わらない」
優しい2人の声が鼓膜をくすぐり更紗の顔に笑顔が戻るとゆっくりと重みが外れ、涼平が2人の背に手を当て先へとうながした。
「杏寿郎君がここに居ないということは、もうご家族は到着されているんだよね?こちらが呼び付けたのにお待たせしちゃ失礼になる、更紗、案内してくれるかな?」
昔と変わらない優しい涼平の表情、自分と顔も性格もよく似た明るい紗那の手を取り広い庭を横切って玄関へと向かう。
「はい!先ほどお義父さまと杏寿郎君の弟さんが到着されて、杏寿郎君と天元君がお部屋へご案内しています。皆さん、お父さんとお母さんと同じくらい優しくて素敵な方なのです!早くご紹介させてください」
敬語を強制されるような過酷な人生を歩んだ娘が、優しい人たちに囲まれ幸せそうに笑っている姿を見て、2人は眩しげに目を細めながら手を引かれるまま屋敷へと足を動かした。