第18章 閑話休題
更紗が顔を出した反対の方向から元気な紗那の声がかかった。
そちらへ顔を向けると笑顔の紗那とゲッソリしている涼平の顔……どうやら心配は杞憂に終わったようだが、更紗は父親の苦労を……杏寿郎の自分に対する苦労を思い知らされた。
「あ、うん。皆さんお元気ですよ。と、とりあえずお父さんもお母さんも中に入って。すぐにお茶出しますので」
さぁさぁと家の中へと促すが、2人は顔を見合わせて少し寂しそうな顔をしている。
その理由が分からなくて首を傾げると、涼平が遠慮気味に口を開いた。
「その話し方は……連れ去られた先で癖付いたのかい?」
更紗の心臓がドクンと音を立てた。
小さい頃、両親と村に住んでいた時は敬語ではなく、普通の村の女の子と同じように話していた。
杏寿郎にも聞かれたが、その時は既に敬語が馴染んでいたし出会った時から敬語だったのですんなり受け入れてくれた。
だが両親は違う。
煉獄家のように代々続く家系は敬語でも話すが、村で敬語で話す親子はいない。
「あ……うん。そうですね……長い期間そう習慣付けられたので、普段誰にでも敬語が出ちゃうかな。気が緩んだり昂ったりしたら敬語はなりを潜めますが……嫌だったらごめんね。出来るだけ直すようにするから……」