第4章 鍛錬と最終選別
「杏寿郎……さん??大丈夫で」
更紗が言葉を最後まで言う前に、杏寿郎が更紗と千寿郎へ駆け寄りたくましい腕で2人を抱き締めた。
「よかった、間に合って!!2人とも怪我はないな?!」
2人はそれぞれ杏寿郎の肩から顔を出してコクコクと頷く。
その視線の先には天元が驚いたように目を見開いて3人を見つめていた。
「マジかよ……煉獄、お前本気で……」
杏寿郎はその言葉に振り向き、困ったような笑顔で天元を見る。
「俺もここまでとは思わなんだ。弱った……俺の弱みが1人増えてしまった」
その顔は任務や柱合会議で自分達に見せる柱としての顔と全く違う、人間味に溢れていて2人の事が心の底から大切なのだと物語っていた。
「お前派手にカッコイイじゃねぇか!!よし、ここの飯は俺が奢ってやる!」
杏寿郎は2人から離れ、天元の前に腕を組んで立ち塞がる。
「それは困る!これは更紗の我が家に来た歓迎会だ!俺が出そう!だが、それより先に……」
杏寿郎は調理場から鍋や調理器具を両手に振りかざしたまま、立ち尽くしている2人の店員に頭を下げた。
「この度の騒動、誠に申し訳ない!あなた達はそれらで俺の連れを守ろうとしてくれてた、心より感謝する!」