第18章 閑話休題
「姫さん!1人で先行くなよー、また変な奴に絡まれんぞ」
考えを巡らせていた更紗の思考は天元の明るい声で一時中断され、隣りにやってきた天元へ自然と意識と視線が向いた。
「天元君!変な奴……懐かしいですね!初めて会った時、食事処でそんな事があったの覚えていますか?あの時はまだ杏寿郎君とも知り合ったばかりで、木刀すら握ったこともなかったんですよね」
元は柔らかく女性らしい手だったが、今見つめている手は皮が厚くなり女性らしさはなくなった。
その手をギュッと握り締め、天元へニコッと微笑みかける。
「あの時の男の人より強くなったでしょうか?誰かの笑顔を守れるでしょうか?」
笑顔の裏に今の心の内が見え隠れしている。
自分が原因で悲しい思いをする人がいないか……と不安に思う気持ちが。
そんな更紗へ天元は袂から聞き心地の良い小さなものを取り出し、目の前へ翳してやる。
「姫さんは強くなったよ。あの時の奴らより確実にな!俺から鈴を取ったろ?あの時を思い出してみろ、柱は苦い顔してたが……剣士全員笑ってた。姫さんは人を笑顔に出来る力がある、だから気にせず笑ってろ!姫さんが笑ってなきゃ後ろのヤツらがみっともねぇ面しか出来ねぇんだ!ったく、嘆かわしい」