第18章 閑話休題
礼儀を欠いてはいないが心配や迷惑をかけていることを自覚しているので、その文面を読む度に更紗は反省する日々だった。
文通を頻繁にしていたことを杏寿郎も知っていたが、内容までは聞いていなかったので更紗の父親……涼平の言葉に驚いた。
「お義父さんが俺のことを?」
「はい、なんでも刀を握ったこともない子を1から育て、あまつさえ鬼に狙われている子をそばにおいてくれている。それはとても普通の人に出来ることじゃない。感謝を忘れず、守られるだけでなく守れるよう強くなりなさい……と」
以前に会った時、自分自身に対する更紗の両親からの印象は悪いものではなかったと杏寿郎は2人の言動から感じ取っていた。
だが実際、娘を鬼狩りという殺伐とした世界に引き入れ、引き離して生活をさせている張本人であるのに違いはないので、本当のところはどうなのだろうと思っていたのだ。
それがこうも良い風に感じてもらえているのだと知り、杏寿郎の頬が自然と緩んでいく。
「お会いした時にお礼を言わねばならんな……その前に戦場に更紗を向かわせることについて、お許しを得なくてはならないが」
「そうですね……でも、きっと分かってくれます。分かると言うよりは1度私が決めたことを覆させることは困難だと、諦めるかたちになりそうです」