第18章 閑話休題
ホッと小さく息を零すと、更紗はクルリと体を反転させて杏寿郎の背中に腕を回した。
「死ぬのが怖いです。でも、杏寿郎君や炭治郎さんたち。柱の方々、鬼殺隊に携わる全ての方々が死んでしまう方がもっと怖いです……そう心から思えるほど私は杏寿郎君を通して大切に想える人が多く出来ました。それはきっと……すごく幸せなことです」
声は震えていない。
杏寿郎の胸に顔を埋めている更紗の顔は見えないが、なんとなく涙は流していないのだろうと感じ取れる。
「人はいつか必ず亡くなります。怪我や事故、病気、天災……何で亡くなるかは分かりませんが、鬼によってではなく大切な方々には天寿を全うしてほしい。だから、怖がるだけでなく手足が千切れても闘い守り抜いて私も生きます!」
顔を上げた更紗の瞳はキリッとしているが、杏寿郎は苦笑せざるを得ない。
「意気込みは素晴らしいが、出来るならば五体満足で……と言ってもらえると俺も安心出来るのだがな。しかし……そうだな。何がなんでも鬼舞辻を倒し、皆で笑えるよう尽力せねばならない!その為の計画も着々と進んでいるので、少しは君の憂いも晴れるのではないか?」