第18章 閑話休題
月でも見ようかと外にやって来たが、今日は生憎の新月で月は姿を見せず、代わりに小さな光を放つ無数の星が空に瞬いていた。
「小さい時、こんな空の下で力について家族で話してたなぁ……最近はすっかりその頃の夢も見なくなりました。あの時も幸せだったけど、今も幸せってことなのでしょうね」
幼い時は両親や村の中だけが自分の世界だった。
このまま村で大きくなっていつか所帯を持ち、村の人に時々力を使いながら幸せに暮らし老いていくものだと、幼いながらに漠然とだが信じて疑っていなかった。
「それが今では刀を振り回して鬼を退治してるなんて、子供の時の私が知ったら目を輝かせそうです。桃太郎みたいでカッコイイって……でも実際はその鬼から多くの人を助けられず悔しい思いばかりです。しかもこれから更に救えない命が増える可能性が高い……嫌だな」
今は1人だから少しくらい泣いてもバレないかなと涙腺を緩ませかけたが、後ろからの暖かく優しい衝撃に一気に涙腺は引き締まった。
「更紗は本当に分かりやすいな。1人きりで抱え込んで涙を流さないでくれ。あの場で泣かれるより、よっぽど胸が締め付けられる」
「ご心配ばかりかけて申し訳ございません。次にくる争いの渦中の私が弱音を吐くのは何だか違うような気がしまして」