第17章 歪みと嘘
「え…… 更紗ちゃん?!待って!この高さから飛び降りるのは危険だ!」
そう無一郎が言った時には既に更紗の体は落下しており、途中壁伝いに崖を降りている玄弥の姿を視界の端に映していた。
「お、おい!足が……」
玄弥の声に振り返ると、先日までと様子の違う玄弥が更紗に向かって手を伸ばしていた。
助けようとしてくれているのだろうが、助けられてしまっては禰豆子を朝日から庇うことが出来なくなる。
「お気になさらず……」
ここに杏寿郎がいれば叱られていたかもしれない……と思っているうちに体は地面へと到達し、足に激痛がはしった。
だが幸いにも複雑に折れてはいないようで、走る分には問題さなそうである。
「禰豆子さん、小さくなってください!」
切実な声が聞こえたのか、大きな瞳を目一杯見開いて更紗を見遣るが体は小さくならない。
なぜと疑問を抱きながらもどうにか禰豆子のそばへとたどり着き、体を丸めさせて自分の羽織の結び目を解いて被せ、体で覆い朝日を直撃しないようにしてやる。
「これでどこまで守れるか……禰豆子さん、気をしっかり持って……誰か!木の箱を探してくだ……さい」
叫ぶ更紗の袖がツンツンと引っ張られる。