第17章 歪みと嘘
治癒を全身に施しながら森へと足を踏み入れると、激しい戦闘があったと確信させる爪痕が多く残っていた。
木々がなぎ倒され根っこから引き抜かれているものまである。
その惨状に更紗が不安を抱いていると禍々しく吐き気を催すような言葉が鼓膜を刺激した。
『弱いものいじめをするな』
間違いなく鬼が言っているのだろう。
何をもって弱いものいじめに当たるというのか。
里を奇襲し多くの人を傷付け命を脅かしているにも関わらず、言うに事欠いて弱いものいじめとは虫がよすぎる。
「自分より弱い人を襲っている癖に……」
不安と苛立ちで胸中をぐちゃぐちゃにしながら進んでいくと、玄弥や鉄穴森、鋼鐵塚、そして里長を助けに向かったはずの無一郎が崖の下に向かって何か叫んでいる。
そちらへ意識を向けると炭治郎が禰豆子によって空中へ放り出された姿が目に入ったが、その禰豆子が朝日に肌を焼かれる姿も更紗の瞳に飛び込んできた。
「ウソ……禰豆子さん!待って、死なないで!」
崖の高さは決して低くない。下手をすれば飛び降りて着地した際に折れるかもしれない高さだ。
「それでも……目の前で失うよりずっとマシです!」