第17章 歪みと嘘
杏寿郎は呆然としている更紗の体を温め隠してやるように自身の羽織を纏わせ、震える背中をゆっくりとさする。
その温かさを感じながら更紗は指摘されて自覚した身体中の怪我の痛みに僅かに顔をしかめたが、胸の痛みも相まってどこから手をつけていいか分からず治癒の方法も思い浮かばない。
それに何故だか体の前面がやけに風通しがいいようで、先程から肌寒さが更紗を襲っている。
「あの……私の体はどうなっているのでしょうか?考えたくもないのですが……まさか前面が抉られて中が見え隠れしている……なんてことはありませんよね?」
痛みからしてそれはないとは分かっている。しかし怪我が酷く命が危うい状態だと痛みを感じなくなることもあると耳にしたことがある更紗は、新たな心配事に冷や汗を流した。
「やはり気付いていなかったのか……安心しろ、体の中身は見え隠れしていない。取り敢えず座って自分の状態を確認するんだ」
「……嫌な予感しかしません」
嫌な予感がしたとしても、再び戦闘になった時に想像通りの姿だと集中できない自信しかない。
しかもこんな時に限って子供鬼の言葉が頭に蘇った。
『あばずれ』