第17章 歪みと嘘
子供鬼の体も抵抗がなくなった影響で前につんのめり、地面へと叩き出される。
「師範、離れてください!」
尻の痛みを感じながらも更紗が体勢を整えて後ろへ跳躍すると、杏寿郎もその指示に従って地面へ平伏した子供鬼から距離を取った。
「太鼓、お借りしますね」
一言子供鬼へ言葉を投げかけると、更紗は震える手で小さな1つの太鼓をトンと叩く。
すると子供鬼のいる地面に巨大なヤツデの葉を模した跡が深く彫り込まれた。
つまり現在子供鬼は自分の血鬼術で押し潰されていることになる。
それと同時に耳を塞ぎたくなるような声とナニかが損壊される音が響き、更紗の手の震えは全身に広がり涙が溢れてくる。
それでも頸が弱点でない……十二鬼月の手によって生み出された子供鬼の動きを止めるため太鼓を幾度か続けた後、震える手に温かい手が添えられた。
「もう叩かなくていい、再生に暫く時間がかかるはずだ」
杏寿郎の視線の先には子供鬼が……それこそ再生するのに時間を要する状態で地面に縫い付けられている。
その姿を確認しようと太鼓に向けられている顔を上げた更紗の眼前に杏寿郎が手を翳した。
「見る必要はない。君は先に自分の身体中の怪我を治しなさい」