第17章 歪みと嘘
更紗の目的を子供鬼が理解し、太鼓を叩こうとするが手が再生していないので空を切る。
それならばと暴れ始めた鬼を杏寿郎が放っておくわけもなく体を斬りつけて阻んだ。
通常の日輪刀で斬られるより杏寿郎の赫い刃で斬られる方が再生が遅くまた痛みも格段に上がるらしい。
たとえ鬼と言えど苦痛に呻く声に何とも言い難い感情に襲われたとしても……苦しんでいるからと手の力を緩めるわけにはいかない。
「貴方に殺された人は……身も心もそんな痛みとは比べ物にならない痛みを味わったんだ!今更痛いだなんて言わないで!」
里の人、里で闘う剣士全員が傷を負った。
もしかすると命を落としている人もいるかもしれない。
それを思うと目の前の鬼に苛立ちを覚える。それでも今から自分がしようとしていることを考えると身が竦む思いがするのも事実だ。
だが自分が考えた事を杏寿郎にさせるなんて絶対に出来ない。
どうにか気持ちを奮い立たせ輪っかに掛けた手と背中に当てた足に再度力を入れた。
すると突如、バキッと破壊される音が響いたかと思うと更紗の手足にあった抵抗が一切なくなり、そのまま後ろに尻もちをついてしまう。
接近して取られることを前提とされていなかったのだろう……子供鬼の手が再生する前に破損させることなく奪うことに成功した。