第17章 歪みと嘘
「辛抱強く待っているのは俺の援護が不可欠だからだろうが……フフッ、健気で愛らしいではないか」
杏寿郎は笑を零して更紗のそばへ移動した。
「やるからには成功させるぞ!」
声に出して伝えられない計画など1つしか思い浮かばない。
最終的な目的まではっきりとは分からないが、鬼へ接近したいのは伝わった。
色々な危険性を加味した上で許可を出すと、更紗の顔が一気に晴れやかなものとなる。
「はい!では行ってまいります!」
一瞬後、2人は表情を引きしめ足を動かした。
木の龍以外の攻撃は全て避け、物理的に反撃可能な攻撃は更紗が刃を振るう前に杏寿郎が全て受け持ち、行く先を阻まれそうになれば道を開いてやる。
そんなことを繰り返していると流石に鬼も不審に思ったのだろう、攻撃の頻度や威力が上がり、5つしかなかったはずの木の龍の頭が倍以上に増えて行く手を阻む。
思わず足を止めて応戦しようと構える更紗に杏寿郎の怒号が飛ばされた。
「構うな!更紗が成すべき事を見誤るな!」
初めて聞く自分に向けられた怒号に驚き、更紗は弾かれたように速度を上げて木の龍が蠢く中へ飛び込んでいく。
「心配するな、全て俺が斬り伏せてやる!」