第17章 歪みと嘘
攻撃が止んだ瞬間、杏寿郎は更紗を後ろから抱きとめ龍の体を飛び越えて後ろへと跳躍し、僅かな時間を作った。
「体は?!大丈夫だったのか?!とりあえずこれを着ていなさい!」
相変わらず心配性な師範は急いで隊服の上を脱ぎ更紗へと着せてやる。
身長や体格に大きく差があるので想像通り布が多く余っているが、スカートの中に裾を仕舞い袖を折れば問題ないだろう。
「今の攻撃での損傷は残っていません。先の闘いで麻痺毒をくらってしまったので所々痺れは残っていますが、闘いに支障をきたすほどではないのでご安心ください!師範が生きていてくれて本当によかったです」
返却すると叱られると判断した更紗は、急いで羽織を脱いでから杏寿郎の隊服を纏って自分仕様に調整し、再度羽織に袖を通して戦闘態勢を整えた。
「それはこちらの言葉だ……生きていてくれてよかった。麻痺が残っているようだが……本当に大丈夫なのだな?」
「麻痺は足手まといにならない程度ですので大丈夫です!それより……師範の傷治しますね」
律儀に断りを入れながらも有無を言わさずさっさと自分の傷を癒す更紗の体を1度抱き締め、治癒完了後すぐに日輪刀を握り直し1歩前へ歩み出た。
「あの鬼は本体ではないので倒せないが、竈門少年たちが本体を倒すまでここで足止めを行う!援護を頼んだぞ!」
「かしこまりました!あれ、師範の刀の色……」
刃全体が赫く染まった日輪刀について疑問を投げかけたが、既に杏寿郎は鬼へと攻撃を仕掛けに行っており声は届かなかった。
更紗は気になりつつも慌てて抜刀し、杏寿郎の後に続き鬼の足止めを開始する。