第17章 歪みと嘘
年下の自分に頭を撫でられるのは嫌だったかなと不安に思ったが、更紗はフワリと笑い嬉しそうに頷いた。
「はい!必ず!師範や皆さんと鬼を倒して無一郎さんに会いに行きます!……無一郎さんもどうかご無事で」
「うん!君も気を付けて……服とか諸々」
そう言い残して無一郎は里長たちの元へと走り去っていった。
更紗は無一郎の忠告を忠実に守ろうと羽織の結び目をキツく締め直して龍の元へと走り出す。
「あ!師範の炎虎!よかった、本当によかったです!」
大好きな師範が健在であることに胸中にあった不安が吹き飛び、自然と更紗の足も早くなるが、その姿を視認して更紗の目の前が真っ暗になる。
龍が杏寿郎の腕に噛み付き、近くにいる子供の鬼が邪悪な笑顔を浮かべたからだ。
「師範!」
更紗は日輪刀を抜き取らぬまま全力で杏寿郎の前へと両手を広げて躍り出ると、体全体に粒子を纏わせる。
その直後、更紗の鼓膜や体に今まで受けたことのない衝撃が襲ってきた。
痛みに襲われ治癒により緩和されを何度か繰り返しようやく攻撃が止んだ頃には、体はどうにか持ち堪えたものの隊服や羽織に大きな損傷を残した。