第17章 歪みと嘘
「無一郎さん、あのうねっている巨大な生き物は何でしょうか?」
無一郎と別れる場所へ辿り着いた更紗の目に飛び込んできたのは、見たこともない大きな蛇のような生き物だった。
「木で作られた龍に見えるけど……あんなのいたっけ?」
「龍とは……蛇の仲間みたいなもの?……あんな大きな蛇、私と杏寿郎君があちらを見た時には居ませんでした。血鬼術でしょうか?」
魚や金魚を操る鬼がいるのだ、龍を作り操る鬼がいたとしても驚かない。
それにしても……空想の生き物や娯楽に疎いからか、子供でも知っている龍を知らない更紗に無一郎は眉を下げる。
「え、龍知らないの?……うん、蛇でいいや。たぶん血鬼術だろうね。大丈夫?俺も一緒に行こうか?」
明らかに先ほど倒した鬼より力量があると思われる、龍を操る鬼の元へ向かおうとしている更紗へと問うが、更紗は考える素振りもなく頭を振った。
「いえ!無一郎さんは里長や里の皆さんを助けてあげてください!師範の所へは私だけで向かいます」
気丈に笑う、自分と変わらない高さにある少女の頭をポンと撫で、上弦の伍と闘う前に掛けてもらった言葉を返す。
「後で必ず会おうね、皆で生きて帰ろう」