第17章 歪みと嘘
もう分裂することはないので動きを少しでも止めるために赫刀を振るうも、鬼が背後にある太鼓を叩いて吸収した鬼の血鬼術を発動させてそれを阻止する。
「また雷か。威力も上がっていて厄介だな」
杏寿郎の体は着実に傷を増やしている。いくら柱といえど更紗のように無尽蔵に動き回れるわけではないので、当然体力も徐々に削られていく。
「容赦せんのではなかったのか?……来ないならこちらから行くぞ!」
雷や暴風、そして炭治郎たちが相手をしていた鬼の怪音波を不規則に発動させ杏寿郎を近付かせない。
それに加え新たな血鬼術なのか、巨大な木の龍を出現させて回避する場所させ奪っていく。
「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎」
足場を可能な限り広く確保するために龍を斬りつけるが、斬った先から新たに生み出されるのでなかなか事が進まず焦りや苛立ちが積もる。
それでもどうにか気を沈め後ろへ飛び退いて龍から距離を取ったものの、なんと龍の口から次々と頭が出現して杏寿郎の腕に噛み付いた。
その瞬間を待っていたのだろう……鬼は醜悪な笑顔を杏寿郎へ向けると怪音波を発生させようと太鼓を叩く動作をとる。
しかし太鼓が叩かれる直前、隊服の至る所に穴を開け、淡黄蘗の羽織の袖をはためかせた少女の背中が目の前に現れた。