第17章 歪みと嘘
これからどこに向かうかなど決まっている。
無一郎が里長のところに向かうなら、里長は心配ない。
しかも上弦の鬼は一体退治したので、残るは杏寿郎が相手をしている一体だけとなる。
更紗は被せてもらった隊服の隙間から手を入れて自分の羽織を前で結んで肌を隠すと、隊服を無一郎へと返却した。
「隊服、ありがとうございました。私は師範の所へ向かいます。痺れもいつの間にやら随分良くなりましたし、必ずお会いすると約束したので」
「そっか、それなら途中まで一緒に行こう。俺の方が年下だけど、なんだかほっとけないし」
年下の少年に心配された恥ずかしさから再び顔が赤くなるが、雰囲気の柔らかくなった無一郎にはやはり笑顔が零れる。
「ありがとうございます、時透様」
「どういたしまして。更紗ちゃん……名前でいいよ?時透様なんて呼ばれ慣れてないから……」
無一郎は返却された隊服をキッチリと着直し、地面にへたり込んでいる更紗へ手を差し出して立たせてやる。
「そうですか……では無一郎さん、里を守るためにもうひと踏ん張り頑張りに行きましょう!」
こうして2人は小屋や森の中に隠れている里の人へ事情を話して、各々の向かう場所へと足を運んだ。