第17章 歪みと嘘
素直に思ったことを言ったのだが、鬼からすれば更紗の言葉は侮辱に過ぎない。
それに気付いた更紗は慌てて口を両手で押さえても時は元には戻らない。
鬼は怒りに身体を震わせ、無一郎は笑いに身体を震わせている。
「アハハ!確かにその通りだね!っと、あの攻撃は危ないかも……避けて!」
「は、はい!」
金色に輝く腕を振り上げ、上弦の伍の拳が更紗と無一郎へ何度も振り下ろされる。
それを受けるのではなく無一郎の指示通り避けるが、隊服の胸下から腹にかけて掠ってしまった。
特に怪我はないが念の為、攻撃が止んで掠った所をチラと確認すると更紗の背筋に悪寒が走った。
「ふ、服が魚になりました!えぇ……これも芸術になるのでしょうか?」
呑気に魚となった隊服を叩き落としていると、無一郎は咄嗟に顔を背け無言のまま上弦の伍の頸へ技をしかけに行ってしまった。
その姿に更紗も我に返って加勢しに行こうと日輪刀を構え足に力を入れるも、無一郎によって制される。
「君は動かないで!もう終わるから!」
「え?!か、かしこまりました!」
そう言い終わると同時に、本当に無一郎は上弦の伍の頸を切り落とし闘いはようやく終わりを迎えた。