第17章 歪みと嘘
「ゲホッゲホッ……うぅ……時透様に渡さなきゃ」
喉の痛みを堪え戦闘中の2人へ視線を向けると、その2人は動きを止めて信じられないものを見る目で更紗を凝視していた。
だが今の更紗にそれに対して疑問に思う余裕などなく、例の如く鞄から抑制剤を取り出して無一郎へと放り投げる。
「それを早く!」
無一郎はそれを受け取ると鬼から距離を取って一気に仰いだ。
「ありがとう!合戦の時、煉獄さんに渡してたものだよね。これで何の負担もなく闘える…… 更紗ちゃんは休憩してていいよ」
穏やかな笑みを更紗へと向けた無一郎だったが、鬼へと体を向けたかと思ったら首を傾げている。
どうしたのかと更紗も同じように首を傾げると、無一郎の口からとんでもない暴言が飛び出した。
芸術をこよなく愛する鬼の壺を侮辱した上に、それを作ったと思われる鬼に対しての侮辱……
「時透様?!」
それに驚いた更紗へ無一郎は舌を出していたずらっ子のような笑顔を向けてきた。
(わざと挑発したのですか?!)
その通り、散々更紗を傷付け苦しめた仕返しで、わざと鬼を侮辱し怒らせたのだ。