第4章 鍛錬と最終選別
そして少し時を遡り、更紗と千寿郎は他愛もない話をして杏寿郎達の帰りとご飯が運ばれてくるのを待っていた。
千寿郎は先程は気付かないフリをしたが、更紗が本当に家族になってくれたらどんなに毎日が幸せだろうと想像すると聞かずにはいられなくなってしまった。
「更紗さんは兄上の事をどう思いますか?」
千寿郎の唐突で曖昧な質問にコテンと首を傾げる。
「杏寿郎さんの事ですか?好きですよ」
あまりにもすんなりと言うものだから、千寿郎の時が止まってしまった。
「でも、千寿郎さんの事も好きです」
(そういう意味でしたか!!)
「あ、ありがとうございます。僕は兄上の真っ直ぐに人を助ける為に自分を鍛える姿、厳しさの中にとてつもない熱い優しさを持っているところが好きなのです!」
千寿郎は自ら兄の好きなところを具体的に挙げ、更紗にも具体的に好きなところを挙げてもらおうとしているのだ。
「好きにも色々ありますものね。千寿郎さんの意見に私も賛成ですが、んー……私は春の太陽みたいに温かく包み込んでくれるような穏やかな優しさが好きです。隣りにいてくださるだけで、心の中がポカポカするんです」