第17章 歪みと嘘
どうにか顔や急所への被害は防いだものの、流石に全身に麻痺毒が刺さると激痛を伴い、体の感覚もなくなっていく。
それなのに意識だけは失えそうにもないので、鬼本体同様厭らしい毒である。
「いきなり魚の群れを連れてきたと思ったら全身棘だらけじゃない。まぁ時間稼ぎはやり遂げてくれたみたいだから、君は後ろに下がってて。あの小屋に鋼鐵塚って刀鍛冶がいるから護衛でもしててよ」
無一郎は無事に鉄穴森から研ぎ直された日輪刀を受け取れたようで、一切の刃こぼれのない日輪刀を鞘から抜き出し更紗の前へとゆっくり歩み出た。
「かしこまりました。時透様、先ほどの魚群を出された時はお気をつけ下さい。魚に牙がありますし、体液には毒がありました。少しでも皮膚に触れれば命にかかわります」
「ふーん……僕の心配より先に自分の棘どうにかしなよ。早く抜き取らないとそっちこそ命に関わるんじゃない?」
無一郎はそう言い残して更紗の後を追ってきた上弦の伍へ歩み寄っていたが、特殊な見た目のそれに一瞬足を止めて更紗へと向き直った。
「聞くまでもないけど……あの歪なのが上弦の鬼で間違いないよね?」
「……間違いございません。額とお口のところにある目に上弦伍と刻まれていますので」