第17章 歪みと嘘
更紗はその魚群の一角を斬り伏せたものの、その体液がなんとも形容し難い独特な臭いを漂わせていることに気が付いた。
しかし全てを避けることは叶わず手の爪先に付着してしまう。
ピリッと刺激を感し隊服でそれを拭い取ることに気を取られた更紗は魚群に囲まれた。
「最近の鬼界では毒でも流行しているのでしょうか……これは流石に不味いかも」
前後左右どこを見回しても魚、魚、魚。
唯一魚の少ない場所は無一郎がいると思われる場所だ。
「誘われてますよね……時透様、少しだけお邪魔します!」
敢えて魚が少なく配置されている場所目掛けて炎虎を放ち後方へ魚を消滅させ、そこをくぐり抜けて魚群からどうにか逃れるが永遠と追い掛けて来るし上弦の伍の腹立たしい笑い声が浴びせられる。
だがそれに腹を立てている時間はない。
暫く走ると無一郎と鉄穴森の後ろ姿が更紗の目に映り、立ち止まって無一郎に大声を張り上げた。
「時透様!鉄穴森様をお守りください!紫炎の呼吸 弍ノ型 星炎燎原」
自分にも背後にいる2人にも魚群や、斬り伏せた魚の体液が向かわないよう細心の注意を払いながら全てを地面へと打ち捨てたが…… 死角から棘金魚の攻撃が放たれ、全身に太い棘が突き刺さった。