第17章 歪みと嘘
芸術をこよなく愛していると思われる鬼……上弦の伍は上下についている目を歪めて不快だと全面に押し出した。
「貴様だったのか?!わたしの作品作りの邪魔をしていたのは!」
「やはり貴方は芸術を語るに値しない!人を使って作品作り?!ふざけるのも大概にして!」
薄くなっていた痣が色濃く浮かび上がり、上弦の伍との距離を詰めるがそれを邪魔するように棘金魚が間に潜り込んでくる。
「邪魔!こんな金魚の攻撃、もうかすりもしませんよ!」
言葉の通り技を使うまでもなく複数の棘金魚を1度で両断すると、勢いを緩めぬまま上弦の伍へ斬りかかるが、壺の中へズルリと身を潜ませてしまったので刃は届かなかった。
「貴様の刃こそ私には届かない!芸術のげの字も理解出来ぬ小娘は……って何をしてる!やめなさい!」
鬼を斬り損ねた更紗の苛立ちはそこかしこに散らばっている壺に向けられた。
もうほぼ八つ当たりに近いかたちで次々と壺を両断し、破壊に破壊を重ね陶器のガラクタと化していく。
「こんな壺は芸術じゃない!人を苦しめ痛めつけ悲しませるものは芸術なんかじゃない!歪で醜悪なガラクタです、そんなものは私が全て破壊し尽くします!」