第17章 歪みと嘘
そんな少女、更紗の師範である杏寿郎は失敗を責めるのではなく、柱として後輩を育てようとしている。
努力を認め、失敗した時は先の行動を示してくれる。
数日前、逆上せた自分を嫌そうな顔1つせず自ら氷を貰ってきてくれた杏寿郎、自身の体調が優れないにも関わらず笑顔で介抱してくれた更紗に対する態度を思い出し、思わず苦い表情となった。
「色々すみませんでした……こっちの鬼は俺が何とかします。引き際は分かんないんで、煉獄さんに任せていいっすか?」
玄弥は日輪刀から南蛮銃に持ち替え新たに出現した槍を持った鬼へ照準を合わせる。
鬼殺隊内で初めて見る南蛮銃に杏寿郎は息を呑んだが、呼吸の技を使えない代わりに自分に合った武器を見つけ出したのだと思うと、柱として素直に嬉しくなり笑顔となった。
「何に対して謝っているのか不明だが……頃合いは任せてくれ!不死川弟、君の働きに期待しているからな!」
そう言うと杏寿郎は躱すだけの動きから、本格的に鬼へと攻撃を仕掛けていった。
(どうにか増やさず再生を遅らせる手立てを考えろ。痣だけでは足止めが精々だ…… こんな時トンデモ事態を無意識に起こせる更紗が羨ましくなる)
今は里内で上弦の鬼を捜索している更紗に思いを巡らせた。