第17章 歪みと嘘
更紗の方は無一郎と合流したことにより先の闘いに光が射した。
それとは反対に杏寿郎の方は玄弥が知らずに増やしてしまった鬼の出現で数的優位はなくなっていた。
「なっ?!鬼が増えた?!」
「不死川弟!この鬼は斬るたびに増えるぞ!どこまで増えるか分からんので気を付けてくれ!」
急所を斬り戦況を良くしたはずなのに、反対に戦況を悪くしてしまったのだと杏寿郎の言葉と目の前の光景から嫌でも分かった。
それにも関わらず咎めることのしない杏寿郎が不思議で仕方なかった。
普通なら罵倒されても仕方がない状況にも関わらず、なぜ責めることをしないのかと。
「すんません……俺のせいで。怒んないんすか?」
杏寿郎は錫杖の鬼の攻撃を器用に躱しながら何かを思い浮かべて苦笑いを浮かべた。
「予想外の事をする子が近くにいると嫌でも慣れる。それに君は戦況を良くしようと動いてくれたのだ、それを責めては柱として情けないだろう!それより不死川弟はそちらの鬼を頼む!ある程度闘ったら竈門少年と合流し鬼の本体を探せ!指示ではなく命令だ!」
予想外の事をする子……それはあの合戦を観ていた者であれば誰でも思い浮かぶだろう。
柱に罠を仕掛け、柱の鈴を奪い、柱に背負い投げをかまし、柱2人を相手に闘い、柱へ奥義を仕掛けたかと思ったらいきなり木刀を投げ捨てた少女の顔が。