第17章 歪みと嘘
再び驚く鉄穴森の体を無理矢理に丸めて身を固くしてすぐに来るであろう痛みに備えるも襲って来ない。
その代わりに先ほど自分が棘を弾いた時と同じ音が鼓膜を刺激した。
「だから言ったでしょ?足手まとい連れてどうするのって。結局このザマじゃ笑い話にもならないよ」
そして続けざまに辛辣なお言葉。
振り返らずとも誰かなど明確で自分や里の人を想い来てくれたことが嬉しくて笑みが零れた。
「時透様、お手間を取らせてしまい申し訳ございません。助けていただきありがとうございます!」
こんな時にもフワッと笑う更紗が理解出来ないのか無一郎は無表情で首を傾げた。
しかしそれも一瞬ですぐに前方へ向き直って現在の状況の確認を行う。
「ここに来るまでに気持ち悪い魚は倒してきたけど鬼はいなかったんだよね。簡潔に今の状況を教えて」
「はい、目の前にいる金魚は麻痺毒が仕込まれた棘を吐き出してきます。一体だけでなく数体いるのでお気をつけ下さい。あと上弦の鬼はまだ姿を表してはいませんが、そこらに点在している壺のどこかに潜んでいる可能性が高いです。全て破壊しますか?」
意外にもきちんとした現状報告に僅かに驚き視線だけを更紗へと向けた後、すぐにその視線は更紗の左大腿部へ移動した。