第17章 歪みと嘘
玄弥が鬼の頸を斬ってしまい更に鬼が増えようとしている時、更紗は目の前に立ちはだかった巨大金魚の壺を破壊し、逃げ惑う人を吸い込む壺から人を救出しようと、今まさに吸い込まれている人の足を引っ張り外へ出しているところだった。
「バラバラに逃げないでください!小鉄さんたちと一緒に身を隠していてください!」
追われていた人たちを小鉄の元へと誘導しながら治癒をかけ続け懇親の力で吸い込まれていた人を引っ張り出し、その人を片腕で抱えて壺を両断する。
だがどういう訳か物を斬った感覚だけで手応えはなかった。
鬼を倒せていないので警戒を緩めず、左腕に抱えた痛みに顔を歪めている人の全身に粒子を纏わせて一瞬で痛みを取り除く。
「痛く怖い思いをさせてしまったこと、申し訳なく思います。動けそうですか?」
1番初めに助けた里の人同様、自分の体の傷や痛みが瞬時に消え去り惚けているが、警戒し緊張を走らせている更紗の表情を見て我に返った。
「い、いや。助けてくれてありがとう。俺は動けます……君はいったい……」
小鉄たちも目の前で起こった不思議な出来事に目を丸くしている。
死の淵に立たされていた人間が更紗から発せられる粒子を纏わされると元通りになるのだから疑問にも思うだろう。