第17章 歪みと嘘
日輪刀を振り上げた瞬間、奪い取ったはずの錫杖が鬼の手と共に再生されて高く掲げられた。
それと同時に杏寿郎の体目掛けて雷が打ち落とされるも、間一髪のところで鬼へ詰め寄ることで回避し急所である頸に刃を滑らせる。
だが鬼は避ける素振りを一切見せない。
「なるほどな」
刃の向きを頸から肩へと転換させ込められた力を斜め下へと流し袈裟斬りにして1度後ろへ飛び退く。
「竈門少年たちが苦戦を強いられたのはこうした理由があった訳か。お前は自分の身が危機に直面した際に分裂する、その片割れが竈門少年と闘っていて、もう一体が何かしら竈門兄妹の反撃にあって吹き飛ばされておりこちらへ向かっている最中……本体はどこだ」
頸を斬っても分裂するだけなら本体ではない。
強さに違いはあるが更紗の斬った巨大金魚と同じようなものだ。
あちらは壺を破壊することで消滅させられるが、どうもこちらは本体を見つけ出して頸を斬らなければ終わらないようである。
「言うと思ったのなら浅はか過ぎて怒りが込み上げてくる。貴様はここで儂に殺されて終いだ」
「俺は炎柱だ、お前に容易く命を奪われるほど……」
「てめぇの相手は俺がしてやる!」
止めようとした時にはもう遅かった。
目の前の鬼の特性を知らない玄弥が頸を斬り落としてしまった。