第17章 歪みと嘘
更紗が無一郎と合流を果たした頃、杏寿郎は森を抜けて、破壊され壁が吹き飛ばされた家屋が見える場所まで辿り着いていた。
しかしその家屋は炭治郎が禰豆子と共に睡眠をとっていた場所だった。
「くっ……無事でいてくれ!」
杏寿郎が速度を上げ家屋の前まで到着し跳躍して破壊された2階の壁から中へと足を踏み入れた瞬間、1番に目に入った光景は禰豆子が錫杖で喉を貫かれたうえに雷を落とされている姿であった。
焦りは怒りへと変換され杏寿郎の体温と心拍数が瞬時に上がる。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」
頬から額にかけて炎のような痣を発現させた杏寿郎の技は、鬼の腕をまるで紙を切るかの如く易々と斬り落とした。
「竈門妹、大丈夫か?!」
喉元に突き刺さった錫杖を斬り落とした腕を掴んで抜き取ってやると驚くほどの再生速度で傷を塞いだ禰豆子は何度も頷き、無事だと意思表示する。
そんな禰豆子を背後に庇い既に腕を再生させた鬼と対峙しながら指示を出した。
「竈門妹は近くで闘っている竈門少年の援護を頼む。この鬼は俺が相手をする」
痣が発現している間、更紗が言っていたように感覚が研ぎ澄まされていく。
どこで誰が闘っているのか、どのような状況なのかが距離が近ければ近いほどより鮮明に把握出来るのだ。