第17章 歪みと嘘
(記憶障害の影響でしょうか?)
そう思いつつ振り返って里の人と小鉄を見ると、小鉄が何か言いたそうに口を動かしていた。
(もしかすると逃げ遅れている人がいるのかも……それに杏寿郎君にもう一体の鬼は任せたと言われました)
「早くしなよ、継子なのに優先順位も考えられないの?」
厳しい言葉に胸がチクリと痛んだが、更紗は首を左右に振って柱である無一郎の指示を拒否した。
「私は行けません。師範にここを任されましたし、恐らくこの先に逃げ遅れた人がいます。しかも上弦の鬼が潜んでると思われますので、私はこの方たちを連れてこちらの鬼を倒しに行きます。師範の言いつけは1つ破ることになってしまいますが……時透様、師範と共にあちらの鬼を倒されたら、戻ってきてくださると助かります」
まさか指示を拒否されると思っていなかった無一郎は、さっさと里の人と小鉄を抱え上げて走り出そうとしている更紗に疑問を投げかける。
「どうして足手まといを連れて行くの?しかも君1人じゃ上弦の鬼なんて倒せないでしょ。他に被害を出してでも里長を助けなきゃ大きな痛手になるの分かんない?」
言っていることは更紗だって理解出来る。
無一郎が言っていることは一言一句間違っていない。
でも、ここで里の人を足手まといだからと見捨てていけば、足手まといだった自分を任務へ同行させてくれていた杏寿郎に顔向け出来なくなってしまう。