第17章 歪みと嘘
遠くからだと木々が邪魔をして分からなかった全容も、近づくにつれそれが確認出来る。
更紗の瞳に映ったのは形容しがたい不気味な様相の魚のようなものだった。
「巨大な金魚……?それならば」
目の前の巨大金魚は鬼ではなく、鬼の本体から作り出されたものだと分かった。
花街で妹鬼が操っていた帯のようなものと同じ感じがしたからだ。
あの帯はどこが急所なのか分からず斬り刻むことで対処したが、金魚ならば首がなくとも首と思しき箇所があるので、そこへ刃を滑らせ胴から頭を斬り離す……が体が元気に動いている。
「頸が弱点ではない?里の人は壺には気をつけてと言っていましたよね」
更紗は断面から背中にへばりついている壺へと視線を動かし、それを追うように地面を蹴り上げて巨大金魚より高い位置から日輪刀を振り下ろして壺を破壊した。
すると巨大金魚は鬼と同じようにバラバラと体が塵となり、やがて消え去っていった。
「さて、時透様を探さなくては」
「そこで足手まとい連れて何してるの?闘えるなら里長助けに行くよ。その人たちは置いていってね、邪魔になるから」
今から探そうとしていた本人が目の前に現れたことに驚くと同時に、里の人たちに向けられた辛辣な言葉に更紗は大きく動揺してしまう。