第17章 歪みと嘘
里の人は何が起こって自分の体が再生したのか理解出来ずにいるが、瀕死の重傷を負った時の事を思い出したのか身体を震わせた。
「いえ、俺は大丈夫ですので剣士さんは行ってください。壺には気を付けてください」
助言もしてくれてこうは言っているが置いていけない。
現にこの人は上弦の鬼がいない場所で瀕死だったのだ。
鬼がどのような血鬼術を使うのか分からない状況で置いていってしまっては死んでしまうかもしれない。
「どうか舌を噛まぬよう口は閉じていてくださいませ」
これ以上押し問答する時間も惜しいと、更紗は有無を言わさず片腕で里の人……しかも男性を抱え上げて杏寿郎の指示通り無一郎が落下した方へと尋常ではない速度で走り出す。
「確かここらへんだったはずですが……」
決して軽くない自分を軽々持ち上げ涼しい顔をしながら独り言を呟く華奢な剣士に目を剥きながらも、少し先に見覚えのある少年を発見して声を上げた。
「剣士さん!あそこに小鉄が」
「小鉄さん?炭治郎さんに稽古をつけていてくれた人ですね。お任せ下さい!」
今までよりも更に速度を上げて一瞬で小鉄の前へ躍り出た更紗は里の人を地面へと下ろし、疲れを感じさせない動きで日輪刀を鞘から抜き取り異形へと刃を向ける。