第17章 歪みと嘘
今いる場所は音がした方角からは距離があり、尚且つ無一郎が飛ばされた方角は更紗たちが向かおうとしていた場所にほど近い。
そして里の中心部には常駐している剣士や炭治郎、禰豆子、玄弥がいると思われる。
それならば更紗がそちらへ赴くより、二手に別れて救援に向かう方が理にかなっている。
「分かりました。師範、どうかお気を付けて」
「あぁ、君もくれぐれも気を付けてくれ。おそらくどちらも上弦だろうからな。死ぬなよ」
上弦の鬼が相手ならば互いに命の保証はない。
最期の会話になるかもしれない今だからこそ、更紗は杏寿郎へと笑顔を向けて見送った。
「もちろんです!師範……杏寿郎君、鬼を倒して必ず後でお会いしましょう!行ってらっしゃいませ」
「必ず会おう!更紗、ここともう一体の鬼は任せたぞ」
更紗の笑顔に杏寿郎も笑顔で応えて、再び長い階段を駆け下りて現場へと向かって行った。
こうしている間も順調に里の人の体は快方へ向かい、ギリギリのところで命をつなぎとめられたことに更紗は安堵のため息を漏らす。
「お加減いかがですか?あまり無理はしていただきたくないですが、立ち上がれるならば私のそばを離れずついてきてもらえますか?」