第17章 歪みと嘘
「……かしこまりました。鬼から里の人を全力で守ります!」
決意の言葉と共に更紗の頬と首に痣が出現した。
その様子に安心した杏寿郎はそれ以降言葉を発することなく足を動かし続けしばらくした頃、踊り場近くで急に足を止めて更紗が勢いのまま転がり落ちないよう腕で体を支える。
突如立ち止まった杏寿郎の視線を追うと、歪に歪まされた体を痙攣させる里の人の姿が更紗の瞳に映った。
「治してやれるか?」
杏寿郎へ返事をするより早く里の人へ駆け寄り、僅かに動いている体へ粒子を纏わせる。
「命さえあればどうにかなると思います。ここは私にお任せ下さい、師範は先に」
“鬼のいる所へ向かってください”
そう言葉を続けようとしたが、向かおうと思っていた場所とは違う方角から何かが破壊される音が鳴り響き強制的に中断させられる。
そんな中そちらへ2人が反射的に顔を向けると人が飛ばされてくる姿が目に飛び込んできた。
「時透!鬼は一体ではないのか?!…… 更紗、俺は時透がいたと思われる里の中心部へ向かう。君はその人を助け次第時透と合流して鬼を倒せ、いいな?」
鬼が里内に少なくとも二体いると思われる現状、柱が別々の鬼を対応しなくてはならない。