第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎は沈黙する。
沈黙は肯定をこの場合は意味している。
「最終選別は弱い鬼しかいねぇ。だが、それは俺たちからすればだ。お前が最終選別を受けた時、何人中何人が生き残った?ちなみに俺の時は20人中俺を含めて3人だ」
天元が言わんとしていることは杏寿郎も分かっているつもりだ。
鬼を狩る事を生業としている自分達は、普通に生活を営んでいる人達よりも遥かに命の危険は高い。
そして、更紗を鬼殺隊の剣士に鍛え上げるという事は、最終選別に向かわせるということだ。
天元の言う通り、最終選別は生存率が著しく低い。
ある時は一人を除いて全員合格した事もあると聞いたが、そんな事はその1度しか知らない。
「それでも俺は更紗の気持ちを優先したい。育手として責任を持って生き残れるように導き、育ててやりたい。俺の気持ちを伝えるのは、それからでも遅くないと思っている」
ふぅん、と興味無さそうに聞いているが、顔は真剣なので一応聞く気はあるのだろう。
そう判断して杏寿郎は続ける。
「あの少女は過去のトラウマを克服する為、新たな目標に向かって心身共に成長しているところだ。そんな所に俺の恋情を入れると目標の妨げとなるだろう、それは育手として面目が立たん」