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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第17章 歪みと嘘


杏寿郎の言いつけを少しばかり破り早足で露天へ向かった更紗が尻もちをつき、杏寿郎を冷や冷やさせながらも無事に心地よい湯の中で寛ぐことが出来た。

湯が湧く音のみが響く中、更紗の頭に浮かんだのは凪いだ水面のように静かな義勇とはまた違った静けさを持つ無一郎の顔だった。
数日間、杏寿郎と打ち合い稽古をする姿を見たことが影響しているのかもしれない。

「杏寿郎君、時透様はどのような方なのですか?柱の方は皆さん人格者でそれぞれ個性豊かですが、時透様は霞柱の名にふさわしく霞のように儚くするりと指の間からすり抜けていってしまって、なかなかお話し出来ていないのです。私のお話しを嫌な顔せず聞いてくださっていたので、お優しい方だとは存じているのですが」

ここ何日か杏寿郎との稽古の合間に無一郎と話す機会があったのだが、今までと同じように一言二言返してくれるだけだった。
特に煩わしそうな雰囲気は感じなかったので他愛のない話しをしてみるも、近くにいるのにどこか遠くの存在のような印象を受けた。

「時透は一種の記憶障害があると聞いている。根は素直でいい子なので、見かけたら今まで通り気軽に話しかけてやってくれ。何かきっかけがあれば本来の姿を取り戻すはずだ」
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