第16章 柱と温泉
するとみるみる顔色が良くなり、全身の火照りも治まってきた。
これ以上続けて見られると困るので目を覚ますギリギリで力を抑止して、引き続き水で冷やした手拭いで体の熱を下げる作業を続ける。
脇の手拭いを変え終え首筋の手拭いを変えようと手を伸ばしたところで、玄弥はゆっくりと瞼を開いた。
「大丈夫ですか?気分は悪くないですか?」
パチッと目が合って数秒……
何故だか玄弥は更紗の手を背中へ捻りあげ動きを拘束してきた。
(なぜこうなったのでしょう?!)
心の声はもちろん玄弥には届かず、更紗は痛みに眉を寄せながらどうにか声を絞り出した。
「玄弥さん……私は鬼ではありません。月神です、覚えていらっしゃいませんか?」
「月神……あっ……悪ぃ!夢で鬼と闘ってて……」
パッと更紗の手を離し、気まずそうに頭を掻きながら向こうを向いてしまった。
いきなり拘束されたことには驚いたが、元気を取り戻した玄弥に笑顔を零して布団へ横たわるよう促す。
「思い出していただけてよかったです。まだ体が熱いと思いますので、もう暫く横になっていて下さい。もうすぐ杏寿郎君が氷を貰ってきてくれますので。あ、その前に少しでもお水飲んでください、すぐ準備しますね」