第16章 柱と温泉
ここは普通の露天風呂ではなく刀鍛冶の里にある露天風呂だ。
利用者は自ずと限られており、この里に住む刀鍛冶を生業とする一族か鬼殺隊士のみとなる。
速やかに杏寿郎は更紗を死角となる場所へ移動させた。
「更紗はここに隠れていなさい。俺が様子を見てくる」
コクコクと頷く更紗から離れ沈んだ人物に近付いて引っ張り上げると、逆上せてしまったのか全身真っ赤にした見覚えのある体格のいい剣士が姿を現した。
「不死川弟ではないか?!よもや更紗が入ってきたので……出るに出れなくなったのか?」
問い掛けても逆上せて気を失っているので答えはなく、杏寿郎は急いで玄弥を担ぎ上げて露天風呂を出た。
「更紗も逆上せるといけないので1度上がるんだ。着替えをして俺たちの部屋へ水と……あれば氷を貰ってきてくれ!」
「はい!すぐにお持ちします!」
勢いよく更紗が膝立ちになって元気に返事をするが、杏寿郎は目を見開き時間が止まったように動かなくなってしまった。
「あの、どうかされましたか?」
「ふむ…… 更紗、体を見てみるといい。俺にとって眼福だがな!」
そう言い残して脱衣場へと笑いながら向かう杏寿郎に首を傾げ言われた通りに自分の体を見る。
手拭いが危うい場所でギリギリ留まっていた。
完全に立ち上がっていたら更紗は羞恥から倒れていたかもしれない。