第16章 柱と温泉
(どうしてこうなったのでしょう?!)
男女で温泉は分けられているのかと思えば、今入っている露天風呂は混浴らしい。
前に天元の家で杏寿郎とは1度風呂を共にした事があり恥ずかしかったものの、あまり離れたくなかったのは事実なのできちんと手拭いを体に巻きつけて挑んだ。
夜も随分深くなった時刻だったので幸いにも杏寿郎と更紗の2人しか露天風呂利用者はおらず、伸び伸びと温泉の温かさと外気の涼しさを満喫していた。
「天元君の好きなことが温泉巡りというのも納得ですね!すごく気持ちよくて初めてですがとても好きになりました!」
「確かにな!鬼狩りが落ち着けば宇髄たちのように温泉巡りをするのもいいかもしれん!少し遠くへ足を伸ばして行ったことのない地方へも赴いてみたいな!」
「はい!北の方も捨てがたいですが、西の方も温泉や商店が多く並ぶ温泉街があると聞きました!想像するだけで楽しいです!」
と他愛もない会話をしていた2人の背後で突然湯の中に重みのあるものが勢いよく倒れ込むような音と、こちらにまで掛かるほどの水しぶきが上がった。
杏寿郎は即座に更紗を抱き寄せながら振り返り、更紗は杏寿郎の肩口から何が起こっているのか確認すると、人が1人湯の中へと沈んでいく様子が目に飛び込んできた。