第16章 柱と温泉
更紗が到着するのは日暮れ前。
もうそろそろその時刻が近付いてきているので、杏寿郎は腰を上げて貸し与えて貰っている部屋から里の出入口へと移動を始める。
「今日は更紗の到着で明日は竈門少年か。更紗は問題なく刀の受け渡しを終えそうだが……竈門少年は鋼鐵塚さんに追い回されるのだろうな」
2人の対象的な様子を思い浮かべ笑顔を零していると、後ろからパタパタと走る音と元気な声が響いてきた。
「煉獄さーん!更紗ちゃんが見つかってここに来るんですよね?」
振り返ると浴衣姿の蜜璃が頬を紅潮させた笑顔でこちらへ小走りで近付いて来ている姿が目に入る。
「甘露寺もここに来ていたのだな!皆のお陰で更紗は無事に見つかった!もうじきここへ到着予定なので、甘露寺も共に出迎えに行くか?」
更紗が連れ去られた当初、蜜璃は心配のあまり涙を流しており捜索も懸命に行ってくれていた。
今も更紗が無事に見つかったことにホッとしたのか、瞳に涙がうっすらと浮かべているが首を左右に振った。
「いえ、私はあと数日ここにいるので落ち着いた頃に会いに行きます!今日はあまり気を遣わせちゃったら可哀想だし……師弟の感動の再会のお邪魔しちゃ悪いですもん!ほら急いで急いで、到着しちゃいますよ!」