第16章 柱と温泉
何が何だか分からないまま更紗は鈴村に見張ってもらいながら着替えを済ませ、あれよあれよという間に目隠しと耳栓をされて隠の背に背負われた。
「あの!私、すごく鈴村さんが来てくださって救われました!今度お礼をさせてもらいます!」
話している途中だが、本当に時間がないのか隠は走り出してしまった。
それでも鈴村へどうにか礼を述べ終え、その後は隠の負担にならないように大人しくしている。
「お礼なんていらないよー!またお化粧お着替えさせてもらえたら私は十分だから!」
鈴村にとって何かをもらうより、更紗をきせかえる方がよっぽど価値のあるものらしい。
その言葉を背後に受けた更紗は鈴村に見えるように大きく頷いて了承した。
お着替えの確約をもらえた鈴村は満面の笑みでウンウンと2度頷き、他の隠たちと共に更紗の姿が見えなくなるまで見送っていた。
「あ、煉獄さんが里で待ってるよって言ってあげるの忘れちゃった……うーん、驚きすぎて気を失わなければいいけど。今度会ったら謝らなくちゃ」
謝らなくちゃと言う割には言葉じりは軽く、杏寿郎と更紗が再会する様子を思い浮かべて楽しんでいるように見える。