第16章 柱と温泉
「何から何まで助けられてばかりだな。礼は後日改めてさせてもらう!今は宇髄の言葉に甘やかせてもらい、俺は里へと向かうことにする!」
「だから礼はいらねぇって……まぁ、それじゃあ気がすまねぇってんなら煉獄の屋敷で嫁たち含めてもてなしてくれ!もちろん、その時は姫さんもいる事が前提だがな!じゃ、また数日後に会おうぜ!それまでの間、派手に姫さん甘やかせてやれよ」
杏寿郎は溌剌とした笑顔で頷き、天元や鎹鴉たちと共に宿を出て街の外へとやってきた。
そこにはすでに隠が布と耳栓を持って待機している。
刀鍛冶の里は鬼からの襲撃を避けるため、剣士たちはもちろん柱たちにも所在は明かされていない。
こうして里へ向かう時は複数の隠を引き継いで、目隠しと耳栓をしてようやくたどり着ける場所なのだ。
数回里へ赴いたことのある杏寿郎はなんの躊躇いもなく、手渡された目隠しと耳栓を装着し準備を整えた。
「では宇髄、行ってくる!すまないが猪頭少年と黄色い少年を頼む!」
「任せとけ!姫さんは頼んだからな!」
そうしてようやく杏寿郎は隠の背に背負われて更紗がやって来る刀鍛冶の里へと旅立って行った。
その後ろ姿に手を振りながら天元は首を傾げる。
「竈門は竈門少年っつってるのに、他の2人は特徴を述べてるだけだよな?名前呼ばねぇの?」
小さな天元の疑問は疑問のまま残ることとなった。