第16章 柱と温泉
心配は杞憂だったようだ。
全員が更紗を心配し戻ってきて欲しいと思ってくれている。
「ありがとう!では早速この手紙が出された場所付近を調べてみるとしよう!柱の皆も任務をこなしつつ探してくれていたが、何分範囲を絞れなくて難儀していた。鬼舞辻に連れ回されていないのであれば、ある程度範囲を特定出来るぞ!」
ここ1週間、3人の前で暗い表情や言動をしていなかったが、やはりふとした瞬間……台所や居間で更紗の姿を度々探しては静かに目を伏せる杏寿郎の姿を見ていたので、元の溌剌とした表情や言葉に全員が喜んだ。
「なんなら今から俺が行ってきてやるよ!待ってろよ、すぐ連れ戻してやるからな!行くぞ、子分ども!」
「待て待て、猪頭少年も竈門少年も黄色い少年も今晩任務があるだろう?体を休めていなさい。捜索は俺や柱たち、あと鎹鴉に任せるんだ。あの子が帰ってきても君たちが怪我をしていれば意味がないだろう?」
危うく屋敷から飛び出しそうな伊之助の腕を掴んで2人に預けると、杏寿郎は任務帰りにも関わらず最低限の荷物を準備して玄関へと急いだ。
「明日の朝には1度こちらに戻るが、それまで留守を頼む!昼以降の鍛錬内容は紙に記しているので忘れんようにな!」
こんな時でも継子の鍛錬には手を抜かない杏寿郎は、3人が頷くのを確認して捜索へと赴いていった。