第16章 柱と温泉
それは皆が思っていることなのだが、本人がそれを良しとしていない今はどうしようもない。
更紗からすれば杏寿郎たちの居場所が分かっているのでこうして手紙を送ることが可能である。
しかし鴉たちですら更紗の足取りを掴めていないので杏寿郎たちからは帰っておいでと言ってあげられない。
「俺たちのことを弱いと思っているのでなく、危険に巻き込みたくないんだ。それに更紗にとってこの屋敷は心安らげる場所、もうそんな場所を失いたくないのだろう……更紗が戻って鬼にこの屋敷の存在が知られれば襲撃を受ける可能性も考えられるが……」
杏寿郎としては戻してやりたい。
今まで夜の一人歩きすらした事のない更紗の今の心境を考えると胸が痛む。
それも毎夜毎夜鬼に追われ、どれほど怖くどれほど心細いかと想像するだけで気持ちが沈むが、ここはもう2人だけの屋敷ではない。
炭治郎たちがいるので伊之助が戻ればいいとは言っているものの、全員の意思も聞いてやらなくてはならないのだ。
「危険なんてどこも同じですよ!藤の花の家紋の家でも宿でも、そこに鬼殺隊がいると分かれば鬼は襲撃してきます!ここは煉獄さんと更紗の家です。探し出して戻ってきてもらいましょう!」
「そうだよ!それに夜に1人女の子が出歩くなんて危ない!それこそ鬼に襲われたら対処法はあるけど、人間の男だった場合…… 更紗ちゃんが抵抗出来るのか分かんないもん!」