第16章 柱と温泉
声が重なり杏寿郎の頭の中が一瞬混乱するが、耳に入ってきた一人一人の単語を繋ぎ合わせて目を見開いた。
「更紗から俺に宛てた手紙か?!見せてくれ!」
小刻みに震える手で炭治郎から差し出された手紙を受け取り宛名や差出人名を確認すると、見間違えるはずもない見慣れた更紗の字が目に映る。
3人が見守る中、慎重に封を開けて2つ折りにされた1枚の紙を取り出し中に書かれたことを読み上げた。
『私は元気にしております。
連れ去られた家から脱出し、今は夜に鬼から追跡されながら放浪しています。
全ての鬼に私の特徴が伝えられたのでしょうか?
人目を避けて夜道に出ると近くにいる鬼が付かず離れずでついてくるのです。
こうした状況ですので居場所をお伝え出来ませんが、どうかご心配なさらず。
杏寿郎君、皆さんもお身体にはくれぐれもお気をつけください。
またお手紙書きますね。』
読み終わり更紗の無事に安堵のため息を漏らすが、相変わらず危険な時ほど頼ろうとしない更紗に眉を寄せた。
「なんで戻ってこねぇんだよ!ここに弱っちぃ奴いねぇんだから、鬼に追われてようが戻ってこりゃいいだろ?!」